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インドネシア通信 『霊山は火山』…の巻き

 

日本では 『喉元過ぎれば熱さ忘れる』、と申しますが

インドネシアでは熱さが喉元を過ぎず口から溢れ出てしまって

おります。

 

中部ジャワの霊山『メラピー山』の噴火が収まり切っていないのに

今度は東ジャワの霊山『ブロモ山』が活発化しているのです。

更にはスマトラ島とジャワ島間の海峡にある『クラカタウ火山』

も噴煙を上げ始める始末です。

 

クラカタウは1883年に大噴火は36000人もの犠牲者を出し

大気圏に達した噴煙のため地球全域の気温が0.5以上

下がった程でした。

太陽光が噴煙で遮られたため数年にわたって変な色の夕焼け

が続きました。あの有名なムンクの絵、『叫び』、もこの夕焼けを

ヒントに作成されたものだそうです。(知らなかった…!)

大噴火で自分自身を跡形もなくなるまでふっ飛ばした結果

海底火山となってしまったのですが、その後海底噴火を重ねて

徐々に盛り上がり火山島(呼称はANAK KRAKATAU:

クラカタウの子供)に戻りつつあるのだそうです。

 

最近スマトラ島のメンタワイ地区で大きな地震と津波被害が

起きたばかりですのに…。

インドネシアは火山と地震の2大災害に苦しみ続けているのです。

 

メラピー山は1930年にも大噴火を起こし1300人もの尊い命を

飲み込みました。

この霊山は世界遺跡の仏教遺跡、ボロブドゥールの近くにあり

遺跡は火山灰を被りました。

ひょっとしたら昔イスラム教徒による破壊の魔の手から遺跡を

守るために火山灰で埋めてくれたのはメラピー山かも知れませ。

 

 

このような信仰の山が暴れて逆に民衆を苦しめているのです。

 

 

インドネシアには『ゴトンロヨン』という相互扶助精神があります。

火山灰にまみれたジョグジャの被災者に対して、灰を落として

健康な避難生活をしてもらおうと全国各地から支援金や救援

物資が続々と送られております。

 

とあるキリスト教系青年ボランティア組織は全国に散らばっている

組織力を生かして、『ジョグジャを助けろ!』、とばかりに

先遣隊が早速ジョグジャへ飛び、被災地に居る友人達との

意見交換を通して、より的確な救援物資を調達しようと

努めております。

『赤ちゃんが灰にまみれて大変だ、石鹸とオシメをを送れ』、

という指示がジャカルタに住む仲間へ来ます。

それを受けてジャカルタの仲間は義援金を募り、それを持って

スーパーへ走り、必要物資を自分達の手で買ってきます。

それをまとめて自分で運転する車でジョグジャへ運び、

これを先遣隊に渡して避難民個々の必要性に合った

物資を直接彼等に配る、

不足があればまたジャカルタへ指示する、という活動です。

ジャカルタが天災に見舞われたときは、ルートを逆を辿って

ジョグジャの友人が助けてくれるでしょう。

 

これぞ『ゴトンロヨン』の精神です。

 

日本語で言うなら『情けは人の為ならず』でしょうか…

 

『人の為にならないから情けは掛けるな』的解釈の方ではなく

『情けを掛けると結局自分に返ってくるのだ』…の方です。

インドネシアでは多くの人が何の気負いもなくこの行為を

自然体で実行しているのです。

 

30年以上インドネシアで生かさせて戴いた小職も今回は

お礼の意味を兼ねてこのゴトンロヨンに参加させてもらいました。

東ジャワに住む小職の友人(日本人)も賛同して一緒に

ゴトンロヨンに参加してくれました。

資金を出して『呼吸を火山灰から守るためのマスク』をはじめ

石鹸、シャンプーやオシメを段ボール箱に一杯買いジョグジャ

へ送って配って貰いました。。

ブロックMの飲み代ぐらいのものでしたが、飲んだくれているより

遙に気分が良かったです。

 

『ゴトンロヨン…』

ひとことでインドネシア人の徳性を表わす実に善き言葉です。

この言葉があるために小職も30年この地で我慢して来れました。

騙され・すかされ・憎み・嫌った30年間ですがこの言葉があった

為に耐えて来れました。

 

彼等の人のために働く姿には頭が下がります。

自分より恵まれている人にゴトンロヨンは及びません。

自分より恵まれない(…と思われる)境遇の人に対して実に素直に

救いの手が出るのです。

第三者から見ると手助けしている人のほうが貧しく見えるときも

多々あります。

いずれが恵まれていて、いずれが恵まれないかは、外見ではなく

己の心が決めようです。

いくら貧しい人でも、より貧しい人を見ればゴトンロヨンが出ます。

そこに打算が入り込む隙は無きように見えます。

 

この言葉を持っていてくれる限り小職はインドネシアの人達を

好きでいられます。

今回の天災は彼等のゴトンロヨンが実に見事に生きていることを

示してくれました。

そして、外人である小職にもゴトンロヨンを試させてくれました。

 

 

天災は悲しいことですが生きいる限り逃れられないものです。

その悲しさを癒してくれるのは人の温もりです。思いやりです。

それが『ゴトンロヨン』なのです。

 

2012年に太陽の活動が一つのピークを迎えるそうです。

地球の活動(火山活動や地震)も歩調をあわせ2012年へ向かって

益々増えると言う説があるそうです。

バリ島にはあの有名な霊山 『アグン山』 があります。

 

自分が災害に巻き込まれないと云う保証はどこにもありません。

どんな不幸に会っても『ゴトンロヨン』さへあれば乗り切って行けると

思いました。

 

日本もインドネシアと同じ様にプレートに乗った地震火山国です。

他人事ではありません。

桜島や阿蘇山は元気に白煙を吹き上げております。

富士山が噴火しないと言う保証はどこにもありません。

 

日本人の 『ゴトンロヨン』 に 期待します。