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インドネシア通信   『華人の生き様』 の巻き 

                                    
神谷 典明

昔はみんな同じでした…私も彼らも。

泥にまみれて現場で働き、夜は酒。
工場のカンティン(食堂)で飯を食い、タバコをふかす。
お互いに独身、夢を語りそして今の境遇を嘆く。

そんな感じが、今では…

向こうはベンツ、こちらはタクシー。
脇机のあるの事務所に座っておられる彼と会うために
可愛い秘書へ、アポをとる。
長い間…待たされる。
挙句の果ては、『神谷10分で話してくれ!』
何で???

この20年の間に彼は変身したのです。
一介の青年から壮年実業家に!
私は単なる中年なのに、
なぜ彼は壮年実業家なのでしょう? 
昔は一緒に現場仕事を
昔は一緒に現場仕事を
仕事、仕事、寝ても醒めても仕事。
話と言えば、利益、売り上げ、採算、借り入れ…
家族の話も趣味の話も色気の話もあったもんではなし。
会えば仕事、会わなくても多分、仕事。
何が楽しくて生きているのやら…
『生きるために金を儲けるの?』 
『金を儲けるために生きているの?』
悔し紛れに尋ねたら、彼は答えられませんでした。

昔、タラカンに金屋の親から金の延べ棒を一個、貰った若者がいました。
『この金を元手に使って事業を起こせ!』
これが親の命令でした。
『これを増やすも減らすもお前の勝手! 無くしたら親の店を継げ!
 嫌だったら増やしてみろ!』

彼はこの金を使って原木輸出を始めました。
相場を当てました。
当時の小職(天龍木材)からも儲けました。
金は増えて実家の金庫に入りきらなくなりました。
親は家業を継がせることを諦めました。
彼は有名になりました。
タラカン一番の男伊達と…。

ツバメの巣や香木を扱っていた別の彼は言いました。
『実業家になってスラバヤに家を建て、ベンツに乗れる 身分になりたい!』…と。

何年か経ちました。
スラバヤのホテルへ私を迎えにきた彼はベンツを運転していました。
…ボロボロの中古でした。
更に十数年経ちました。
今では…スラバヤに家どころか、中心街に
ビジネスビルを建てて銀行に貸し、
最上階に事務所を構えるビルオーナーであり、
ホテルのオーナーであり、合板工場のオーナーであり、
家具工場のオーナーであり、石炭事業に手を染め、
将来は電力事業に乗り出したいと熱く語る、壮年実業家です。
ベンツはピカピカの運転手付最新車です。
運転手がドアを閉めるときヒヤヒヤしております。
『そーと閉めて!…、この車は油圧で自動的に
 ドアがきつく閉まるようになっているのだから、 ガチャンと閉めなくてもいいんだ!』
…気が小さいのです。
どうしてビジネスのときだけ豪胆になれるのか、不思議です。

華人(帰化した華僑の呼称)の男は金で測られます。
金儲けの出来ない男はただの種馬。
金儲けが出来てこそ男の価値があると男も女も思って、おります。

鶏口となるとも牛後となるなかれ!…は嘘です。
鶏口となる以外に男を立てる術がないのです。
金を儲ける能力こそが華人男性の一枚看板なのです。
いくらイケメンであっても金を儲けられない男は
結婚の対象にはなりません。
せいぜい遊んだ後捨てられるだけです。
華人の女は金に縛られます。
愛も恋も全て金で測ります。
金の儲けられない男に操は捧げません。
女がこうだから、男がこうなるのか?
男がこうだから、女がこうなるのか?
日本人の私には判りません。
判るのは、『こうだ!』…と言う事実だけです。

誰よりも多く金を儲けて世間に見せたい!
これが華人若人の気持ちです。
学歴も運動神経も顔の美醜さへも関係ありません。
『金儲け』と言う土俵で皆が相撲を取っているのです。
他に秤はありません。
実にシンプルです。
実に公平です。
親の七光りも先生のエコヒイキも役に立ちません。
『儲けて何ぼ!』、…ただそれだけです。

華人が会社勤めをしないのは男になりたいからです。
世間に認められたいからです。
女にモテタイからです。
金で男を揚げたいからです。
金で家族の安全を買いたいからです。
こんな彼らと勝負して勝てるはずもありません。
金に対する執着心が根本から違います。

金儲けは即ち生きること。
金の無い男は世間で無視され、女に無視され、親に嘆かれる。
実に分り易い生活基準ではないですか。
でも、実に厳しい基準でもあります。
他の才能は一切無視されるのですから。
金儲けに向かって一心不乱に走る、
それが華人の人生なのです。

皆さん!、真似出来ますか?

…真似…、したいですか???
今では超多忙な実業家
今では超多忙な実業家